第9回 団地再生卒業設計賞 入選作

第9回団地再生卒業設計賞の審査会が2012年5月21日に開催されました。

入選された方々の作品をご覧いただけます。

2012年6月11日に開催された一般社団法人団地再生支援協会の総会にて

表彰式が行なわれました。

 

 

<団地再生卒業設計賞>

山田 直哉  大阪工業大学

「縁むすび~縁側で繋がるコミュニティのかたち」

ピロティと屋上をつないで考えている点が面白い。コルビュジェの理想だろうか。建物の老朽化、住民の高齢化・無縁化が進んだ団地の現実を踏まえて、耐震補強と同時に、若い人にとって魅力的な空間にすることをめざした改修案。「縁結び」というキーワードで、となり近所とのコミュニケーションを増進する「縁側」増設には共感するが、増設するための構造的、環境的な配慮についてのテクニカルな考え方・アイデアも示して欲しいところ。また、増設の伴う建物間のオープンスペースや周辺の環境への影響はどのように考えたのだろうか。きっちりした図面表現は好感が持てる。現実性を帯びたスケール感も良い。ただし問題は、構造要素について、既存部分に新たなストラクチャーを付加することは外部空間を削減するわけだが、これについて何のフォローもない。屋外と屋内をむすびつける縁側という要素を考えたなら、その周辺にひろがる屋外空間の魅力にも目をむけてほしいような気がする。また縁側によってリニューアルされた棟同士が、どのようにネットワーク化され役割分担されるのだろうか?団地全体に対する構想に提案がないことも残念である。

<団地再生卒業設計賞>

松本 愛子  神戸大学

「topos-みんながそのままそこにいる-千葉NTにおける環境シェアの提案-」

 

 わずかに残された里山の一部が、力を盛り返して団地の中に侵入し、人工の精華たる建築を喰い始めているように見えて、面白かった。現在の千里ニュータウンには、開発前の土地の記憶が「地霊」のように残されていると考え、原地形の復元をはかる提案。周辺自然環境を含む再生のシナリオを描き、居住密度を下げ、ゆったりしたライフスタイルを設定することには共感する。しかし、新しく付加されたコミュニティ施設を覆う巨大な緑化屋根により原地形が復元できるならば、コミュニティ施設や人工地盤上の「里山」の持続可能なありかたも提案して欲しい。千里ニュータウンが里山というレイヤーの上にオーバーレイされたものという分析と、自らの提案を、それに重ねる点には頷けるものがある。しかし、そのレイヤーのデザインには不満が残る。千里ニュータウンというレイヤーの暴力性に対する批判であるにもかかわらず、自ら提案するレイヤーの暴力性に対して無批判であることだ。新イヤーは徹底的に非暴力的であるべきだろう。

 

≪概評 内田 祥哉≫

前回までは、毎年確実に応募案の内容は充実し、着実に現実を踏まえた発展があったと思われてきた。ところが今回は、突如、応募案が三点という激減状況に、遭遇することになった。

その原因は、昨年の3月11日の地震の影響であろうと言うことが、殆どの審査員から云われたようであった。若い学生が、すでに住むところの余っている団地の問題より、今、住むところのない地域の問題に心を引かれたとしても、不思議でない。それなら、その両者を結びつけるような問題の解決提案があっても良かったか、と思うが、それは、まだ社会の仕組みに疎い学生にとって、無理な難問だったのかもしれない。

審査員の評を見ると、それぞれの内容には、興味を引かれるところがあったようだが、すべての作品に賞を割り当てるには至らなかった。災害予想地域の団地再生の問題なども、今後の応募に現れるのかもしれない。

 

団地再生設計賞

受賞作品をご覧いただけます。